生まれ出ずるということ

震災後、一ヶ月以上経つ。
Twitterなど見ていても余震に対する反応はさまざまだが、過敏に反応していた人たちも落ち着きつつあるというかあまり目立たなくなってきたように思える。


現在、我が家の猫たちはおおむね2つのグループに分かれる。
地震がおきてもまったく動じない(起きもしない)か、目を覚まして周囲をうかがうもその場から動かない猫たちと、
逃げ隠れする猫たち。
ざっくり半分くらいの数で分かれているが、普段から割と弱い立場の猫のほうが逃げる・隠れるといった行動を取るように思える。
それでも、今まではそこまで地震に対して過剰な反応はなかったと思うので、これも震災のストレスから来ているものなのだろう。


食・住が保障され、怖いときには人間に抱きかかえられて甘えている家猫でもこのような状態であるから、
のら猫などはどれだけストレスを抱えているものだろうか?




この時期、我が家の庭には数匹の子猫がミィミィ鳴きながら母猫の後をついてくる。
そしていっちょまえの顔をして餌にありつき、さんざん食べた後で母猫にミルクをねだる。
ひなたぼっこして、目が覚めたら庭中を駆け回り、植木や花をボロボロにするのである。


それが当たり前の光景であった。


今年、家に顔を見せた仔猫はまだ1匹。
少し不安はあったものの、母猫のおなかもすっきりしていたので、どこかで生んでまだつれてこれる状態ではないのだろうと考えていた。
ソレは甘い考えだとすぐにわかることになったが。




昨日、庭の隅に放置してあった箱(のら猫の寝床にもなっていた)を掃除しようと中を見ると、ピンク色の小さなモノがいくつか転がっていた。
胎のうのついたままのまだ未熟な仔猫。
小さな前足も後ろ足もしっぽもすべてそろったソレは腐敗もせずそこにあった。


初産であったり逆に老齢出産である場合にはままあることなのだが、今回のはそれとは違う。
母猫は昨年も生んでいるしそこまで高齢でもない。
状況からしてそこに産み落としてからそれほど経ってはいないのかもしれないが、地震の影響はすくなからずあるのではないかと思う。
猫だってストレスを感じる。それは普段の生活からもわかる。




震災で直接の被害を受けてないにも関わらず、生きてこの世界に出てこれなかった命がある。
ソレを考えると、今、生まれてくることができた奇跡を感じずにはいられない。
唯一庭に現れた猫がこれから先生き延びることが出来るかどうかわからないが、
せめてその手助けが出来ればと思うのである。